720pと1080iの困った問題

デジタルハイビジョンとは、D端子の規格でいうと、D3以上がハイビジョンにあたります。1080i(D3)、720p(D4)、1080p(D5)です。

日本のデジタル放送は1080i(D3)での放送となっています。海外では720p(D4)での放送もあるらしいですが、現在、日本では720pの放送はありません(720pは放送規格として認められていない)。

1080iと720pのどちらの方がより素晴らしいかという問題は、人によって言い分が大きく異なり、魑魅魍魎がうごめく謎多き問題となっています。

私もどちらが良いかは正直よくわかりませんが、私の見解は以下の通りです。

  1. 液晶テレビが全盛の時代において、ブラウン管を前提としたインターレース方式よりは、プログレッシブ方式の方が自然でしょう。その意味では、1080iよりは720pの方が適切だと思います。
  1. 解像度の問題においては、720pよりも1080iの方がよいでしょう。最近の液晶テレビはほとんどがフルHDの解像度ですので、720pをアップスケールするよりは、1080iをI/P変換した方がまだ適切と思われます。
  1. 一番の理想は1080pですが、ビットレートがとてもじゃないが足りません。これを解決するには、現行のMPEG2ではなく、MPEG4(H264)等に圧縮方式を移行するしかないでしょう。
  1. 1080pが最終形態と考えるならば、その過渡期としては1080iがより適切であると思います。
  1. では、素材の観点からはどうでしょうか。実写映像においては、カメラが1080iですから問題はないです(というのは当然で、日本が1080iの放送規格だから、カメラも1080iにならざるをえなかった)。しかし、ゲームやアニメは事情が違います。
  1. まずはゲームですが、PS3XBOX360ではほとんどが720pです。これは1080pで制作するには、解像度が増える分、ゲーム機に対する処理負荷が高くなる、結果として制作費が高くなるのでゲームが制作しづらいという事情から来ていると思われます。
  1. アニメの制作現場では、ほとんどが720p制作です。しかし、放送局に納入するのは1080iでの納入となるので、制作現場において1080iへのアップスケールが行われています。制作現場で作られた素の映像を見たいという立場からすれば、720pのまま放送して欲しいと思うので、720pでの放送規格も認められていれば良かったと思います。

個人的に一番気になるのは、やっぱりゲームとアニメの問題で、ゲームは基本的に720pですが、フルHDのテレビで遊ぶとき、テレビ側でアップスケールをする必要があります。最近のテレビはアップスケールの技術も相当進歩していますけど、それでも1080pの素材に比べれば、やっぱり見劣りします。

まあ、ドットバイドットすればいいだけの話ですが、それよりは720pの素材はハーフHD(1366×768)のパネルが一番最適なのではないか、と思っています。要するに、なんでもかんでもフルHDが良いかというと、そうでもないと思うのです。

アニメも720pで作ったのならば、720pのまま放送するのが理想的だと思います。これはブルーレイでも同じで、720pで作ったものをわざわざ1080iにしてブルーレイに収録などというケースもありまして、本末転倒も甚だしいと思います。

もちろん、フルHDのパネルで視聴するのを前提とするならば、テレビ側でアップスケールするよりも、スタジオでアップスケールした方がより美しい映像が楽しめるわけですが。

そういう意味で、何がベストなのか、という問題は素材や視聴環境ともリンクするので、一概に言えないわけです。後日、テレビ機の側からこの問題を考えようと思います。